成年後見人は“親族が望ましい”?

成年後見は、認知症の高齢者などを支援するために財産管理や身上監護を行う制度です。具体的には、成年後見人は成年被後見人の預貯金の管理や水道光熱費の支払などをしたり、病院や施設への入退院の契約などをしたりします。

お金を扱うだけに成年後見人には誰がなるのがよいのかは課題です。

 

 

| 成年後見人は誰がなる?

 

成年後見人は成年被後見人のお世話をするわけですから、成年被後見人のことをよく知っている親族がなるのが一番です。それは間違いないのですが、世の中はそううまくはいきません。

以前から、成年被後見人の財産を横領する事件が多発しているのです。横領事件の約90%が親族後見人による事件と言われています。そのため、親族以外の専門職後見人が選ばれることが多くあります。成年後見人は家庭裁判所が選びますから、たとえ親族を希望していたとしても専門職が後見人になることもありますし、その逆もあります。

親族が後見人になるパターンは約8,500件。親族以外の専門職が後見人になるパターンは約18,000件。親族がなるパターンはかなり少なくなっています。以前の記事“法律家による横領事件”にも書きましたが、実は10年ほど前は90%近くが親族後見人でした。しかし、横領事件が多発するようになってから、専門職後見人が推奨された経緯があります。

 

 

| 成年後見人は親族がいいの?

 

親族後見人の横領事件が多発してから専門職後見人が増えてきましたが、近年、少し風向きが変わってきました。

2016年5月に“成年後見制度利用促進法”が施行され、2017年3月の“成年後見制度利用促進基本計画”の閣議決定があった頃からです。

基本計画では、身上監護を円滑・適切に行うためには、支援者とも円滑な関係を築いて本人の意思決定を支援する体制の構築が必要だから、後見人と家族などの支援者との間に信頼関係がない場合でも後見人を解任できない旨を述べています。

最高裁判所も“第2回成年後見制度利用促進専門家会議”で、本人の利益保護の観点からは、後見人になるのにふさわしい親族などがいる場合には、親族などが後見人になるのが望ましいと述べています。

理由は分かりませんが、主なに専門職後見人に支払う報酬の点ではないでしょうか。

 

 

| 候補者を選ぶ基準

 

裁判所が候補者以外の後見人を選任する場合には、次の基準で判断します。

1 親族間の意見の対立

2 候補者と本人との関係が疎遠

3 流動資産の額や種類が多い(1000万~2000万円以上の場合)

4 不動産売買や生命保険金受領など成年後見の申立ての動機が重大な法律行為である

5 本人と後見人との間の利益相反行為について後見監督人などの代理が必要

6 賃料収入など大きな変動が予想される財産を保有していて定期的に収入状況の確認が必要

7 訴訟・調停・債務整理などの法的手続きを予定

8 候補者が高検事務に自信がなかったり相談相手を希望していたりする

9 候補者が自己や親族のために本人の財産を利用し、またはその予定がある

10 候補者が本人の財産の運用を目的としている

11 候補者が健康上の問題や多忙などの問題を抱えている

12 候補者と本人との間に高額な貸借や立替金があって、清算には本人の利益保護が特に必要

13 候補者と本人との生活費などが十分に分離されていない

14 財産目録や収支状況報告書の記載が不十分で、後見人として適正な事務遂行が困難

15 本人の財産状況が不明確で、専門職による調査が必要

15個もありますが、大きく分けて4つです。

1つめは“親族間や候補者と本人との関係性”です。1番と2番がこれにあたります。

2つめは“本人に理由がある場合”です。3~7番がこれです。

3つめは“”候補者に理由がある場合“です。8~11番です。

4つめは“候補者と本人の財産が不明確な場合”です。12~15番です。

上記のいくつかにあてはまる場合には、候補者以外が後見人に選ばれる可能性があります。財産管理に揉め事がなく簡単であれば親族が後見人をした方がいいですし、財産管理が難しい場合には専門職が後見人になるのがいいですね。

 

 

| まとめ

 

1 成年後見人の2/3は専門職!

2 専門職後見人の報酬が高いから親族が後見人に!?

3 揉め事がなければ親族、難しい案件は専門職に!



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