| 専任技術者になるための要件
専任技術者は現場のリーダー的存在です。経営業務の管理責任者と兼任ができます。ただし、1つの営業所内に限られます。たとえば、営業所が一つしかない小さな会社では、社長さんが経営業務の権利責任者と専任技術者を兼任しているケースが多いです。
専任技術者になるための要件は、“一般建設業”と“特定建設業”では異なります。“特定建設業”の方が厳しい要件になっています。“特定建設業”では大きな工事を請け負いますので、下請け業者さんを保護する必要があるからだと言われています。
1 “専任”であること
“専任”というのは、働いている営業所に常勤して勤務時間のすべてをその仕事に費やしていることです。勤務状況や給与の支払い状況、人事権の状況などで判断されます。所属は関係ありませんので、よその会社から出向してきた社員でもOKです。
原則として“専任”ではないとされる場合は次のとおりです。
(1)住所が営業所から遠すぎて、常識的に通勤できないと思われる場合
(2)他の営業所の“専任”が必要な職種についている場合
(3)建築事務所で専任が求められる建築士、専任の宅地建物取引士などになっている場合
(4)個人事業主、他の法人の常勤役員などをしている場合
(5)給与の額が月額10万円未満の場合(大阪府の目安)
2 “技術者”であること
“技術者”になるにはいくつかのパターンがあります。大きく分けると次の3つです。
(1)国家資格を持っている場合
この資格はいろいろあります。資格があれば証明が簡単ですので、“学歴が合わない”“実務経験がまったく足りない”という方は、一念奮起をして資格を取得されるのがおすすめです。
資格としては、1級・2級土木施工管理士、1級・2級建築士、建設・総合技術監理、第1種電気工事士、甲種・乙種消防設備士、建築大工の1級など多岐にわたります。
これらの資格があればどの建設業の許可も取れるのかというと、そうではありません。電気工事士は電気工事業だけしか取れませんし、消防設備士は消防施設工事業だけしか取れません。土木施工管理士や建築士など他の資格も、同じように取れる許可の種類は限定されます。
許可を取りたい業種の資格なのかどうかは検討が必要です。
(2)実務経験がある場合
許可を取る業種で10年以上の実務経験が必要です。見習いとしての経験を加えてもOKです。ただし、現場の掃除をするなどの雑務のみでは経験として認められませんので注意してください。
この10年間で2つ以上の業種を経験していたとしても、許可で使えるのは10年間で1つだけです。たとえば、塗装工事と防水工事を10年間経験したとしても、許可が取れるのは塗装工事か防水工事のどちらか1つだけです。“10年1業種”が専任技術者の実務経験のポイントです。
中には例外として2業種以上の専任技術者になる場合に期間が短くなる組み合わせもあります。シリーズの最後にQ&A形式でまとめたいと思います。
(3)学歴があって実務経験がある場合
実は、実務経験が10年より短くてすむこともあります。それが指定学科の学歴です。通常は10年の実務経験が必要でも、指定された学科を卒業した人は高卒で5年、大卒で3年に短縮されます。
たとえば、大学の土木工学科を卒業した人は土木工事業や左官工事業、しゅんせつ工事業などの許可を取るときに実務経験が3年ですみます。
学科の一覧表が公表されていますがかなり大雑把な分け方ですので、実際には同じ内容を学習する学科でも名前が異なる場合があります。こればっかりは役所に問い合わせないとはっきりしません。
(4)指導監督的実務経験がある場合(特定建設業のみ)
一定の資格を持っていて指導監督的実務経験があれば、特定建設業の専任技術者になることができます。
しかし、“指定建設業”の許可を取るときにはこのパターンは使えません。“指定建設業”は7つありまして、“土木工事業”、“建築工事業”、“電気工事業”、“管工事業”、“鋼構造物工事業”、“舗装工事業”、“造園工事業”です。
指導監督的実務経験は、元請で受けた工事の監督経験、請負金額が4500万円以上、通算で2年以上の3つの要件をすべて満たさないといけません。
| 実務経験の確認に必要な書類
1 実務経験が必要な場合
(1)工事の実績確認書と工期・工事名・工事内容・請負金額が確認できる書類
具体的には工事の契約書・注文書・請求書・内訳書などの書類です。
証明したい業種について12カ月以上空白期間がないように書類を集めます。必要書類で収集が最も大変な書類の一つです。10年の実務経験で許可を取るなら10年分、3年の実務経験で許可を取るなら3年分の書類が必要です。
(2)実務経験の経験期間に在籍していたことが分かる書類
年金の被保険者記録照会回答票、雇用保険被保険者証、雇用保険被保険者離職票、確定申告書の第一表と専従者給与欄の氏名・金額の記載書面(証明者が個人事業主の場合)のどれか1つが必要です。
2 指導監督的実務経験が必要な場合(特定建設業のみ)
(1)元請・工期・工事名・工事内容・請負金額(4500万円以上)を確認できる書類
具体的には工事の契約書・注文書・請求書・内訳書などの書類になります。“元請”の確認が必要になりますので注意してください。
証明する2年間で12カ月以上空白期間がないように書類を集めます。これも集めるのが大変な書類の一つです。
(2)実務経験の経験期間に在籍していたことが分かる書類
年金の被保険者記録照会回答票、雇用保険被保険者証、雇用保険被保険者離職票、確定申告書の第一表と専従者給与欄の氏名・金額の記載書面(証明者が個人事業主の場合)のどれか1つが必要です。
| まとめ
1 専任技術者になるパターンは3種類+1!
2 必要書類は収集が大変な書類の1つ!
3 特定建設業の場合は指導監督的実務経験が必要!