| 相続人がいないときってどんな手続きが必要?
被相続人が亡くなったとき、相続人がいるかどうか分からないことがあります。その場合でも、相続財産を放っておくわけにはいきません。
相続人がいれば相続するかどうか確認をしなければいけませんし、いなければ別の手続を進めなければいけません。いずれにしても、相続財産を管理して清算をしながら相続人を探す必要があります。
1 相続財産管理人を決める
相続人がいるかどうか分からないときは、家庭裁判所が相続財産の管理人を決めます。管理人が決まったらそのことを“公告”します。“広告”ではありません、“公告”です。
公告は、裁判所の掲示板に張り出したり官報に載せたりして一般の人に知らせることです。
実際、多くの人は裁判所の掲示板や官報をじっくり見るわけではありませんからあまり意味がないのかもしれませんが、これくらいしか方法がありませんから仕方ありません。新聞に載せるという方法もありますけども費用が高くつきそうです。公告の期間は2か月です。家庭裁判所が行います。
2 被相続人の債権者や相続財産の受遺者に知らせる
相続財産管理人が決まった公告で相続人が出てこない場合、次の手続に移ります。
それが、債権者と受遺者探しです。もちろん、債権者や受遺者が分かっているときはそれぞれ個別に請求をするよう知らせます。管理人が把握していない債権者や受遺者のために、ここでも公告をします。期間は2か月です。管理人が行います。
3 相続人探し
今までに2回、計4カ月間公告していますが、それでも相続人が現れない場合はさらに公告します。今度は直接的に相続人探しの公告です。期間は6か月以上で、管理人や検察官の請求で家庭裁判所が行います。
これが最後の公告です。それでも相続人が現れなければ、“相続人がいない”ことに確定します。
この手続きは相続人が“いるかいないか”をハッキリさせるためのものですから、“相続人はいるけれどもどこにいるか分からない”という場合には使えません。不在者や失踪者として別の手続が必要になります。
| 相続人がいなければ特別縁故者に!
相続人ではないけれど家族同然の人や晩年にお世話をした人がいるかもしれません。例えば、内縁の妻や事実上の養子です。このような人たちは周囲の人から見れば普通の家族ですから、事実上の家族として遺産を渡した方がいいですよね。このような人を“特別縁故者”といいます。
ただ、どんな人が特別縁故者かははっきりとしません。民法には“例えばこんな人・・・”というようにしか書かれていないからです。しかも、特別縁故者かどうかは家庭裁判所が決めます。ですから、“私が特別縁故者だ!”という人は裁判所に申し出なければいけません。
この期間は相続人探しの公告期間が終わってから3か月以内です。特別縁故者でしたら被相続人が亡くなったことも知っていますし、相続人が見つからないこともよく知っているでしょう。前もって準備を始めているのなら、3か月という短い期間でも十分なのでしょうね。
ちなみに、民法や判例で特別縁故者とされている人たちはこのような人です。
1 被相続人と一つの生計で生活していた人
2 被相続人の療養看護などお世話をしていた人
3 30年間、苦楽を共にした事実上の養子(法律上の養子は相続人です)
4 20年間、家事など一切の世話をしていた事実上の養親(法律上の養親は相続人です)
5 被相続人と同居して看護や世話をしているが、経済的には独立している知人
| 特別縁故者もいないときは誰がもらうの?
相続人もいないし特別縁故者もいないときは、国が相続財産をもらいます。債権者がいれば相続財産から支払いを受けますし、受遺者がいれば遺贈されます。また、ここでは説明していませんが、不動産などの共有者がいればその共有者に引き継がれます。ですから多額の財産が国に持っていかれるということはそれほど多くないでしょうね。
結局は、次のような順番で相続財産が分配されます。
1 相続人、受遺者
2 特別縁故者
3 共有者
4 国
国に財産を取られるくらいなら誰かに渡した方がいいですよね?相続人のいない方は遺言を書いておきましょう。お世話になった方に少しずつ分けてもいいですし、どこかに寄付をしてもいいですね。ご自身の最後の希望が叶えませんか?
| まとめ
1 管理人が債権者や受遺者、相続人を探します!
2 相続人がいなければ特別縁故者に!
3 特別縁故者もいなければ共有者に!
4 共有者もいなければ国に取られます!
5 相続人がいない方は遺言を書きましょう!
予定よりも長くなってしまいましたが、今回で相続に関する話は終わりです。次回からは建設業の許可の話を書きたいと思います。今後ともよろしくお願いします。